PID制御の仕組み 2回目(PI制御)

アニメーションでわかるPID制御の仕組み

前回のP制御に続いて、I(積分)制御の役割と特性について紹介します。この説明をご覧になる場合は、PID制御の仕組み1回目(P制御)から順にご覧になることをお勧めします。

I制御はオフセットの解消を目的とすると、他のさまざまなPID制御の紹介に記載されていますが、そのオフセットと呼ばれる現象が、どのような特性をもっているものなのか、認識されされ難く、そのために、I制御の理解がうまくできずにいる方も多いように感じます。そこで、ここでは、オフセットの特性に着目して、I制御の本来の役割を説明します。

前回P制御で使用した制御対象のモデルの容器に、以下のように穴が開いて水漏れ個所があった場合を考えてみましょう。(システムの演算:1秒1回、比例ゲイン:0.5)

まず、P制御のみで操作対象(ノズルのスライド)を動かし、水を注ぐ場合を考えます。

以下に示すように、P操作量に基づいて容器に水が注がれ、現在容器に注がれている量に応じて、容器から水が漏れていきます。容器には、黄色で示された水位の水が残ります。これが1回分のシステム演算で注がれる水の量になります。

このP制御の演算を繰り返して、水を注ぐと以下のように容器の水位は変化してゆきます。(アニメーションを以下に示します)

容器の水漏れ量はこのように、目標値の水位に近づくにしたがって、P操作量とお互いにつり合ったところで、容器の水位は安定してしまいます。これをオフセットと呼んでおり、この問題の解消には、水漏れ量(排水量)の変化に合わせて、同じだけの追加の操作量が必要となります。この役割を果たすのがI制御である積分操作量(I操作量)です。

では、以下のように水漏れ量(排水量)の変化に着目してみます。

排水量は目標値に近づくと一定となります。したがって、この変化の特性と同じ推移の操作量の変化を加える必要があります。

そこで、最初からの偏差を演算タイミングごとに足し合わせていく(積分する)と、いづれ、偏差が0になったとき、合計値が一定となるため、この特性を利用しています。この偏差の積分値に、人が任意に決定する定数(積分ゲイン)をかけて、大きさを調整することで、排水量と同じ推移の操作量を加えています。

以下にI(積分)制御を加えた、PI制御の変化を示します。

このようにI制御は、一定に発生する変化量(オフセット)によって生じる目標値とのずれを、無くすことを目的に使用されています。

参考にした本 基礎 制御工学

コメント

  1. 敷波明彦 より:

    関連業界に居ながらP制御でのオフセットが、演算1秒1回と、漏れ(排出流量)のアニメーションでよく理解できました。
    他のカテゴリーも興味をひくものが多々あり、少しづつ読ませて頂こうと思っています。
    有難うございました。   拝

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