誘導機の原理 4回目(始動力率が低い理由)

絵と波形でわかる誘導機の仕組み

ここでは、始動時に誘導機の力率が低く、トルクが低下してしまう理由について説明します。

前回3回目では以下のように時間軸と空間軸で波形を比較した場合、V2・I2は1/4周期(90°)の位相差があり、磁界Φと二次電流I2が重なったとき、最大トルクで最大力率1となることを説明しました。今回は空間位置の波形を用いて説明します。

まず、運転時と始動時の回転磁界に対する回転子の動きについて考えてみます。始動時では、以下のように回転磁界に対し、回転子は全くついてはいかない状況となります。

この始動直後、回転子導体では、磁束が回転子内部に届く前に回転磁界が移動してしまうため、回転子導体内側の磁束分布は、運転時のように、回転磁界が回転子導体を過ぎる過程で急減・急増することが、なくなります。その一方、回転子導体表面では、磁極の入れ替わりが速くなります。その結果、リアクトルのような作用が回転子導体で行われ、回転子導体表面の磁束変化を打消す方向の電流が流れ出します。

つまり、回転子導体の一点からは、回転磁界の変化が以下のように見えるため、回転子はリアクトルのふるまいをします。

この時、磁束Φと二次電流I2が、同符号で重なる範囲が小さくなりますので、トルクが回転方向(正の面積範囲)と逆回転方向(負の面積範囲)に分散してしまいます。これにより、始動時は総合的にトルクが減少してしまうのです。

力率の観点で見たときも、ともに、一次電圧V1とトルク電流I1の位相がずれているため、始動時の力率が低くくなるとわかります。

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誘導機・同期機器ともにかなり詳しい範囲まで記載されています

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