エネルギー・素材メーカー各社が進める戦略

理系企業研究(2021年)

素材メーカーに就職を目指そうとしている場合、エントリーシートや面接で、その企業の方針に合致しているかを皆さんに問いかけることがあります。そのため、企業の成長戦略を押さえておくことがとても重要になります。素材メーカーが進めようとしている成長戦略は、各社似ているところがあります。今回は、素材業界が共通して進めようとしている成長戦略の一つを紹介しようと思います。

エネルギー・素材をつくる巨大プラントを持つ企業(製紙・石油・化学(エチレン)・非鉄金属・電力・ガス等)は、世界で勝負するうえで、単に生産している素材の製品のみが売り上げの対象ではありません。生産工程で効率的に生産し、より正確に制御し、寿命を延ばし、合理的にメンテナンスを行えるように追求することで改善されていった設備の知見も、特許使用契約や独自製品の販売を行うことで、比較的大きな利益を生み出すという成長戦略を立てている企業が多くあります。

たいてい、実際に使用している素材をつくる巨大プラントを持つ企業の方が、巨大プラントを製造するメーカー以上に、世界の同業他社が抱えるニーズをよく理解しています。世界の同業他社に設備の販売を売り込む際、巨大プラントを持つ企業が、巨大プラントを製造するメーカーと共同で設備の設計を行い、より需要者の求める付加価値の高い商品として販売することで利益を得ています。その仕組みをわかりやすくするため、以下に関係図を示します。

モーターなど動力機器・制御機器を扱うメーカーは、プラント製造メーカーに製品を納入し、プラント製造メーカーは、納入した機器を組み合わせて、運用上使用できる状態にしエネルギー・素材メーカーに納入します。エネルギー・素材メーカーでは、納入したプラントを、より生産上のメリットを出すために改造を繰り返し、改善を行ってゆきます。そこで得た知見は、電気機器メーカーやプラント製造メーカーが知ることのない最適技術の開発につながったり、特許として蓄積されてゆきます。

それらの蓄積を武器として、エネルギー・素材メーカーは、納入するプラント製造メーカーと手を組み、海外メーカーに販売したり、利用契約を交わすことで利益を得ていくことを、成長戦略としています。

以上のように、エネルギー・素材をつくる巨大プラントを持つ企業の将来性を、考えたとき、設備の知見を世界の企業に対して如何に有利に使うかが、今後の企業発展に大きく寄与します。日本の重厚産業は世界に比べて早く産業を発展させてきました。その点からも、製造で得た知見は世界と比較したとき豊富にあるため、知見から得た特許を活かしながら、本業の素材製品の販売を世界に行うことで、世界をリードしていこうとしている企業が多く存在します。

現状自分が入ろうとしている企業とその業界が、世界にどの程度そうした進出を試みているか、確かめておくことを強くお勧めします。遅すぎる技術面の世界進出は、利益の享受を見逃す場合もありますし、技術面の世界進出の必要性がないほど、最先端の技術保有による世界シェアの独占ができている場合もあります。就職に失敗しないためにも、「業界地図」をご確認ください。

また、これは筆者のあくまで技術屋である意見ですが、継続的な技術面の世界進出の優位性を業界別で考えたとき、業界他社のみならず、他の業界へも技術面の進出を狙わなくてはいけないと考えています。その場合、より様々な仕組みの巨大プラントを多く扱っている業界が、それだけ改善の機会が多くなり知見を得る機会に恵まれるため、有利になってくるのでは、と考えています。

これは参考ですが、同じ原理機構で、同じ改善業務が想定される設備を横並びにした、各素材業界の保有設備一覧表を作成しましたので、紹介します。

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