地絡方向継電器は、どうして故障回線がわかるの?

絵でわかる送配電の仕組み

地絡方向継電器は、三相三線式の三相の合成電流(零相電流Io)と、中性点の電位(零相電圧Vo)との位相差で地絡している回線と地絡していない回線の判別を行います。ここでは、地絡している回線と地絡していない回線の位相差の違いについて、テブナン等価回路を用いずに、本来の地絡状況をモデルとして解説します。

(こちらの閲覧前に、地絡時の電位の変化について以下を閲覧いただくことをお勧めします)

地絡時 電圧はどのように変わっていくの? | もしも目指すなら (mazasunara.com)

三相3線式の2回線の回路において、a1相のケーブルが地絡した場合を考えます。

「地絡前の対地間の電位」と「地絡時の対地間の電位」は、次のように変わります。

《地絡前の対地間の電位》

中性点は0V、各相の対地間電圧は、三相交流電源の相電圧(Ea、Eb、Ec)となります。

《地絡時の対地間の電位》

電源供給側の発電機の相電圧、線間電圧維持により、中性点が-Ea V、b1相とb2相がEb-Ea V、c1相とc2相がEc-Ea Vと、地絡相の相電圧Ea V分だけ、電位と位相が変わることとなります。

この時、健全相の各回線から流れ込む電流Ib1+Ic1は、各健全相の対地間電圧とケーブルの対地静電容量jωC1をかけ合わせた充電電流となります。

この充電電流を「対地間電圧の位相の成分」に着目しながら計算すると、以下のように、充電電流の対地間電圧の位相の成分は、-Eaと同じになります

Ib1+Ic1は、-Eaの位相成分にケーブル対地間の静電容量(コンデンサ)を掛け合わせた結果となるため、-Eaの位相成分より、進んだ電流が流れることがわかります。

Ib2+Ic2も同様であるため、-Eaの位相成分より、進んだ電流が流れます。

 次に、接地抵抗Rに流れる電流の位相(IRーEa/R)を考えると、抵抗成分なので、-Eaの位相成分と同じ位相になります。

 最後に地絡している相(a1相)に流れる電流の位相を考えると、a1相には各相の充電電流と接地抵抗に流れる電流が合わさった合成電流[IR+(Ib2+Ic2)+(Ib1+Ic1)]が、「対地0V ⇒ 中性点-Ea V」の向きに対し、逆向き(逆位相)に流れます。[-IR-(Ib2+Ic2)ー(Ib1+Ic1)]

この時、a1相・b1相・c1相の回線とa2相・b2相・c2相の回線で、それぞれの三相の合成電流(零相電流Io)における位相を比較します。

地絡している回線では、Ib1+Ic1の電流成分は、a1相とb1相・c1相とで打ち消され、Io=-IR-(Ib2+Ic2)の電流が流れます。これは、中性点-Ea(=零相電圧Vo)の位相に対し、遅れた電流になります。

健全な回線では、Io=Ib2+Ic2の電流が流れます。これは、中性点-Ea(=零相電圧Vo)の位相に対し、進んだ電流になります。

以上のように中性点の電圧位相に対し、地絡している回線と健全な回線では、零相電流Ioの位相が異なるため、位相を比較することで地絡している回線を見分けることができます。

補足

地絡方向継電器では、基準の位相を-Ea(=零相電圧Vo)の逆位相であるEa(=ーVo)としていますので、

地絡している回線では、中性点-Ea(=ーVo)の位相に対し、零相電流Ioは進んだ電流となります。

健全な回線では、中性点-Ea(=ーVo)の位相に対し、零相電流Ioは遅れた電流となります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました