戦艦大和から現代に至るまでの驚くべき技術発展の速さを感じよう(鉄の性能)

戦艦大和から現代の技術へ

ここでは、その時代の技術レベルのを示す戦艦大和で使用された技術が、その後、現代に至るまで、どの程度進化しているのかを紹介します。

今回はこの範囲、装甲

砲撃から守るための鉄(鋼板

戦艦に使用されていた鋼板は、砲撃による船体の変形と割れを防止するための耐弾性を可能な限り上げるため、しなりやすさ(靭性)と硬度が必要ですが、

これは現代の、自動車や建築物でも同様に必要とされている特性です。1880年頃、日露戦争で使用された戦艦の鉄の厚さは、戦艦大和より半分の大きさでありながら、船の側面に使用された鉄の厚さは大和以上でした。この時代の鉄の性能を基準として各時代で同じ性能の鉄を制作したとしたとき、技術がどのように進化していったかを紹介したいと思います。

1890年代にはニッケル元素の添加により厚さは70%へ【ニッケル鋼】、さらに、鉄の表面を木炭で焼き入れすることで、表面に炭素を多く含有させ硬度をアップさせる技法(浸炭)が確立し、50%の厚さで1880年代の鉄の性能を維持できるようになりました【バーウェイ・ニッケル鋼】。

しかし、大和の製造を行うにあたって、幅の大きな鋼板に浸炭で硬度を均一にするように焼き入れの調整を行うことは難しいものでした。そこで、戦艦大和の時代1940年代では、さらなる元素(クロム)の追加と、鉄製造時の表面を均一に急冷する技術を取り入れることで、1880年代の50%の厚さで足りる同じ性能のものを生産できるようにしました【VH鋼】。また、この頃、ニッケル元素の価格が高騰したため、少し性能は劣りますが代替となる元素の活用も可能となりました【CNC鋼、MNC鋼】。

 ここまでが1880年代から70年間の発展です。時代が進み、大和の時代である1940~50年からさらに、70年程度が経った現代では、高度な熱処理技術と大量のデータ処理技術の確立で、組織をより微細化し、均一かつ正確にコントロール技術が確立し、1880年代の性能は25%の厚さで維持できるレベルまで進化しました。

鉄の価格も、また、生産能力の進化とともに、1940年頃は現代換算の単価で17万円/tが厚板の鉄の価格でしたが、現代では価格は約半分の9万円/tになっています。

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