変圧器の励磁突入電流ってなぜ起きるの?

絵と波形でわかる変圧器の仕組み

励磁突入電流は、変圧器への電源を遮断したとき鉄心内部の磁束Φが残った状態になることで、次に電源の再投入をした際に、変圧器の鉄心で、残っていた磁束と電源から作られる磁束が合わさり磁気飽和が起きてしまい、変圧器一次側に過大に流れる電流です。

変圧器の二次側に負荷がなく、励磁電流Ioのみが流れているとき、変圧器の一次・二次の電圧V1・V2、励磁電流Io、磁束Φの挙動は以下のように、電圧V1に対し、励磁電流Ioと磁束Φが90°遅れた位相となります。(ここでは、本質理解のため、影響の小さい鉄損の影響を無視して考えています。各位相のベクトル関係がわからない場合は、最後に「変圧器のベクトル図の作り方」という投稿を載せておきますので、ご覧ください)

上記の状態から途中で変圧器への電源を遮断し、変圧器への電圧印加を停止したとします。変圧器鉄心内の磁束Φは、電圧印加を停止した時点の大きさを保持します。

その後、再度、変圧器に電圧を印加したとき、電源遮断時と同方向の位相から電圧印加が始まった場合、鉄心内の磁束は停止時からさらに増加し、磁気飽和(※1)に至ります。磁気飽和となると、変圧器一次側のコイルは、コイルの中の磁束変化がなくなりリアクトルとしての機能を失う(※2)ため、一次側は短絡回路となり、過大な電流が流れ出します。これを励磁突入電流といいます。

(※1)ここでは、鉄心内部の磁束が変化しにくくなった時点で磁気飽和と表現しています。

(※2)リアクトルの機能のメカニズムがわからない場合は、最後に「コンデンサとリアクトルで位相差が生まれる理由」という投稿を載せますのでご覧ください。

鉄心内部の磁気飽和は、変圧器への交流電源電圧により徐々に解消されていきますが、その間、過大な電流が流れ続けます。

変圧器のベクトル図の作り方 | もしも目指すなら (mazasunara.com)

コンデンサとリアクトルで位相差が生まれる理由 | もしも目指すなら (mazasunara.com)

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