エネルギー・素材メーカーの工場における技術系の仕事紹介(七回目 水質環境設備)

工場設備のいろいろ と 技術者の仕事

 エネルギー・素材メーカー企業に就職を検討している電気を学んでいる皆さんが、どのような設備の改善・改造に業務に今後携わるか、今回も鉄鋼会社を先に取り上げ、具体的な仕事内容について紹介したいと思います。第七回目は、水質環境設備である凝集沈殿設備と加圧浮上設備についての業務を紹介したいと思います。凝集沈殿設備は、鉄鋼業界のみならず、ほぼすべての素材メーカーで使用されています。また、加圧浮上設備の原理は、製紙業界におけるフローテータも同じですので、こちらもあわせて紹介します。

 鉄鋼会社では、熱した鉄鋼材料を冷却した際の水や電気集塵機で集めたばいじんを洗い流した水は、非常に濁度が高く汚れてしまいます。凝集沈殿設備とは、それらの汚れてしまった水を、薬品によって汚れを固めて沈殿させることで浄化し、循環水として再利用できる状態にするための設備です。その原理を以下に示します。

 入口から入った汚れた水は、まず個体の水酸化物(例えば Al(OH)3など)を形成する薬品を添加することで、水の中の汚れに含まれているOHどうしが結合し、小さな汚れの塊を形成します。その後、細長いひものように結合した分子が入った薬品(高分子凝集剤)を添加することで、小さな塊を集めて水に沈む程度の大きな塊を作ります。この塊が水の流れの緩やかな水槽で沈降し、水槽の上水のみを取り出すことで再利用可能な水を得るという仕組みです。

 薬品を扱う水槽では薬品反応速度を薬品量と攪拌機の回転数によって調整し、沈降した汚れの引き抜きは水槽下で旋回するレーキとポンプの回転数で調整されます。プラントエンジニアの業務は、処理前と処理後の水の濁度の測定値から適正な薬品使用料と各電動機の回転数を割り出す制御の構築、沈降した汚れの量を電動機の負荷等で検知し、適正な引き抜き量に調整する制御の構築といった仕事を行います。

 凝集沈殿設備で浄化した水は循環水として再利用できますが、海や川で流せるほどの環境基準値を満たしていない場合があります。排水として工場の外へ放流するために、さらに水の浄化を行う設備として、汚れを小さな泡で浮かせて取り除く加圧浮上装置と呼ばれるものがあります。以下にその仕組みの図を示します。

 先ほどの凝集沈殿設備と同様に、薬品により小さな汚れの塊を形成させます。その後、微細な泡を含む水と合流させることで、汚れの塊に泡が付着し汚れが水槽の上部に浮上します。泡が含まれない水槽の中間層から水を取り出すことで、より清浄された水を得るという仕組みです。

 微細な気泡の発生は送水圧と送風圧の調整量により量や大きさが変化します。電気のみならずプラントエンジニア全般の仕事としては、排水する量に応じて適切な薬品量、気泡発生部の送水圧、送風圧を調整し、もしくは、そのような制御システムを構築し、処理能力の改善向上を行うといった仕事があります。

 ほぼ同様の原理の設備で、製紙会社の使用するフローテータという設備があります。製紙会社では色の抜けていないパルプ水を過酸化水素により、黒ズミの塊と水に溶けたパルプ水に分解し、微細な気泡で黒ズミの塊を浮上させて分離します。この設備の改善業務も加圧浮上装置と同様、過酸化水素の量(低減)、気泡発生部の送水圧、送風圧を調整し、改善向上を行う仕事があります。

コメント

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