エネルギー・素材メーカーの工場における技術系の仕事紹介(六回目 大気環境設備)

工場設備のいろいろ と 技術者の仕事

 エネルギー・素材メーカー企業に就職を検討している電気を学んでいる皆さんが、どのような設備の改善・改造に業務に今後携わるか、今回も鉄鋼会社を先に取り上げ、具体的な仕事内容について紹介したいと思います。第六回目は、大気環境設備である排ガス処理設備と電気集塵機についての改善業務を紹介したいと思います。排ガス処理設備は、ごみ処理発電プラントを有する企業で同様の設備が使用されています。電気集塵機は、鉄鋼業界のみならず、ほぼすべての素材メーカーで使用されています。

排ガス処理設備は、吸引ファン・燃焼炉・急冷室から構成され、燃焼中に発生する環境に有害なダイオキシンの発生を、燃焼温度を制限することで防止するための装置です。以下にその仕組みの図を示します。

鉄鋼用電気炉やごみ焼却炉では、ものを高温で燃焼するため、600~400℃の間でダイオキシンが必ず発生してしまいます。排ガス処理設備では、物を燃焼した際のばいじんとともにダイオキシン類の気体を、吸引ファンで回収し、燃焼炉で800℃以上に加熱することでダイオキシンを完全分解し、すぐに急冷室で急速冷却することでダイオキシンの発生を防止しています。

燃焼炉と急冷室は温度を常時測定し一定温度となる制御を行っており、吸引ファンにより送気される排ガスが多くなるほど、燃焼炉の燃焼コストと急冷室のエアー・冷却水動力の電気コストは増大します。吸引ファンにより送気される排ガスが少なければ、ばいじんもダイオキシン類も回収できません。

 プラントエンジニアの業務としては、吸引ファンの出力1000~2000kWの巨大電動機の回転数を制御し、吸引ファンの送気量を適正化する制御の構築などを担当します。

 次に電気集塵機の概要についても紹介します。電気集塵機は、燃焼施設で発生したばいじんをコロナ放電で帯電させて回収する装置です。

電気集塵機は、主に放電極である放電線の劣化によって、放電発生範囲が狭まり集塵能力が落ちてゆきます。しかし、燃焼施設で発生するばいじん量は一定ではなく、ばいじんの連続測定機器も制度の高いものが存在しないため、集塵能力の低下を検知することは難しく、通常一定(10~15)の年数を基準に放電線を更新しています。この更新費用は非常に高く、電気集塵機のサイズにもよりますが通常2台で運用しますので合わせて7千万円~1億円以上します。

プラントエンジニアの業務としては、集塵能力低下を適切に判断し、放電線の更新周期を延ばすといったことがあります。 環境設備は、納入時のメーカー設計ではかなり余裕を見ている場合が多く、省エネを行う上での効果は大きいものがありますが、環境設備の安易な能力低減は、環境法令・条例基準の超過につながるため、その場合、行政による即時、操業停止処分といったかなりのリスクがあります。実行には、それなりの根拠をもって実施することが非常に大事になります。

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